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此の痛みを忘れるすべがあるのなら・・・ butterfly * めずらしく瑞垣の方から電話を掛けてきた いつもの舖に出掛けて行くと 一番奥の席に煙草を吸っている背中が見えた 「お前 ちゃんと食ってるのか?」 顏を見て眞っ先にそう訊いてしまった 光の具合か 随分とやつれて見える ああ と 曖昧な返事 灰皿には もう何本か吸い殻が入っている 「惡い、待たせたか」 「いや、ちょっと前に來たとこ」 云いながら 新しい煙草に火を点ける 前よりも煙草の量が増えている 「吸い過ぎぢゃないか、見付かったらまずいぢゃろ」 「うん・・・」 いつもなら此處で 「一希ちゃんぢゃあるまいし、そんなヘマはしません」くらい 云ってみせるのに 「やっぱお前おかしいぞ、一体・・・」 「煙草をな、吸っとらんとやっとれんのや。なんや口淋しゅうて・・・」 夢の樣に云って溜め息を吐く !!! こいつ・・・ 「毎晩夢に出て來るんや。“俊”て名前呼んで。其れだけでもう堪らんくなって・・・ 朝起きて自分がいやんなる。俺はガキかっつーの」 こいつは・・・ 「瑞垣、場処替えよ」 睛も合わせずに先に席を立つ こいつ自覚無いんか こんな・・・ ヤバイと思った 其の時の俺は確かにこいつに欲情していた 今にも崩れそうな危うさを 横顏から 首筋から 指先から 叫びたいくらいの切なさを 口元から 双眸から 「何でそんなにまで我慢してんだよっ」 「自分でもあほやと思うとる」 俺は其の唇をふさいだ 初めて見る 白い背中に舞う蝶は儚げで 手を放すと ひらひら 何處かに 飛んで行ってしまいそうだった 「もっと 強く・・・も・・・と 深く・・・」 愛しい人の名を呼ばぬよう きつく唇を噛み 胸の痛みに鳴咽を漏らす 「呼べよ、あいつの名を」 きゅっと口を結び 子供みたいにかぶりを振る 「其れぢゃちっとも樂にならんぢゃろ」 驚いた樣に睛を見開く 一瞬戸惑いの色を見せ 捕らえる前にすり抜ける そうしてゆっくり瞼を閉じると もう俺の手には届かない 「・・・・・・・・・しゅ・・・っ・・・・・・しゅ・ご・・・」 消え入りそうなか細い聲で 仔猫の樣に甘く鳴く 何度も何度も 捕まえた 赫い蝶は 胸に止まって痣になる こいつの事を想う度 胸を燒く焔になる 苦い痛みを伴って 20041212 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ “戀と呼ぶには”の續きになってるのですが 微妙にパラレル・・・ 二本同時に書き始めて此方の方がほぼ先に出來てしまったと云う そして 海瑞!! 紛う方無き海瑞!! 瑞海を目指してたのに あれ? おミズが泣いちゃうと慰めたくなっちゃうんですね 煙草止めろとは云わない一希さん 其れは私が止めてほしくないから(笑) 煙草キャラスキーv |