戀と呼ぶには




付き合いはそんなに長くない

時間があるとこうやって会ってくだらない話をする程度

知り合ったのは中三の時

野球部の練習試合で

瑞垣は横手の5番でショートだった

知ってる事は

口が惡くて 性格も惡くて

でも外面は良くって

煙草やってて

ひねくれてて

本音は絶対云わなくて
     

ずっと好きな奴がいる・・・
     

“幼馴染みの門脇秀吾”



門脇とは學校も別々になり 今では殆ど会わないらしい

でも氣にしている事は

野球の話をしない事で判る

ずっと續けていた野球は 卒業と同時にやめてしまった



「今度のチームはなかなかおもしろそうなんぢゃ」

そんな話も さも興味なさそうに聞き流している

「今は何も部活やっとらんのか?」

「もう 何處も入部して呉れってうるさくてさ。

ほら、俺って器用だし 何でもそつなくこなしちゃうからさぁ

何處入っても 即レギュラーは決まってるし。俊 迷っちゃう」

そう云ってみせるものの

何處にも入る氣が無いのは明らかだ



「一希ちゃんはさあ、俺の事どう思ってるわけ?]

唐突に訊いてくる

「何を急に」

「だってこんなとこに呼び出したりしちゃってさ」

「惡かったな俺んちで。用がないとあかんのか?」

「用がなくても呼び出しちゃうんだ、こんなとこに」

そうしてにやにや笑っている

瑞垣は人の事をよく見ている

一度会っただけで うちの一年生バッテリーの性格もすぐに見抜いていた

そういやコイツ 俺の事はどう見とるんぢゃろ

「お前が期待してるような事はないからなっ」

「期待って何?」

しまったと思う

「ぢ、ぢゃあ そっちは俺の事どう思うとるんぢゃ」

一瞬の沈黙

思い付いたようにすっと睛を細め俺を見る



「知りたい?」



瑞垣が手を伸ばし髪に触れてくる

ゆっくり耳に

それから頬に・・・


「ちょっと待ったっ!」

近付いてこようとする顏を押しとどめて俺は叫んだ

「それはないでしょ一希ちゃん。好き合ってる者同士 部屋にふたりっきりなのに」

「誰が好きって云ったよ」

「ちがうの?」

心臓がびくんとなる

顏が赫くなってるのが判る

耳が火照る

此れぢゃ肯定してるみたいぢゃないか

「だっだいたいお前好きな奴がおるぢゃろが」

瑞垣の動きが止まる

驚いたような怒ったような睛が此方を見ている





こいつこんな風に本音が出るんだ

「知らんと思うとうたん・・・!」

いきなり肩を掴まれ床に押し付けられる

「何すん・・・っ」


・・・煙草の味が  した

とても苦くて

苦くて苦くて 苦しくなるのに

同時に甘く痺れさせる

はらはら はらはら

秘密の中身が零れてくる

胸に鍵掛けて仕舞っていた想い


こいつにこんな思いさせてんのかよ


想いの先にいる

俺ではない奴を恨みながら

触れられる距離にいて

それ以上近付かないように












「もうちょっと  このまま・・・・・・ええか・・・?」

「ああ・・・」

頬にあたるやわらかな髪の感触を左手で確かめながら

どうかこいつがこれ以上苦しまないように  と






名付けようのない此の想いはたぶん

戀と呼ぶには

















20041206
    
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おミズが
自分に氣があるようなとこに付け込んで一希さんを慰み物にする(←ヒドイ・・・)
とか云うコメディっぽいもの(!)を目指してた
筈なのに  おかしいな・・・
しかも
瑞海・・・瑞?
てな微妙なものに

お互い探り合っててちっとも動かないので話も進まない進まない
ちょっと進むと
「よっしゃ おミズ頑張れ!!」
と念じながら書きました

一希さんは
たとえ結婚してもおミズが傷付いてたら慰めに行っちゃうようなそんな氣がして
其れは戀ぢゃないよな
とか
そんな感じ

しかし何處まで行っても動じない男です 一希さん

      そして例によって自分で書いてるのに 讀み返して
え・そんな事になってんの?とか
其處で終わりかよ!とか
思っちまったよ